最近、嬉しいことがありました。
引きこもりであった方をカウンセリングして、仕事が出来るようにまでもっていったことです。それも実際行ったことは、たった2日だけです。紙に書くと簡単ですが、その壮絶な話をお伝えしたいと思います。
通常はこうした人は紹介や、よほどのことがない限り受けることはしません。日常は、離婚しそうなので、まず自分を変えたい主婦、仕事の能力を上げたい経営者やサラリーマン、自分の人生をよりよくしたい結婚前の女性などがお客さんです。
それは、今年の6月はじめのことでした。ある同じカウンセリングをしている仲間から、「大変な人がいるからできるか出来ないかわからないけど、会ってくれないか?」との電話でした。
実際、2年ほど前に、このまま行くと精神病院へ行き、薬漬けとなり一生が終わってしまうような人をほんの3週間ほどの集中的なカウンセリングで回復させて、仕事復帰させた経験があるので、今回の話が来たのです。
聞くと、失恋のショックから半年以上引きこもりになった30代はじめの娘を持つ母さんが、「娘をなんとか出来ないでしょうか。」ということでの相談でした。
こうしたときに仕事を受ける基準は、精神薬や睡眠薬を摂っていないことと、会ってみての感触です。
薬は摂っていないということで、会うことにしました。会ってみると、完全に意識が常人でなく目が違っていました。そして私に対して「この人だれ! 帰って!」と同じ言葉を繰り返すのみでした。
いやはや大変な状態だなと思いました。
しかし、もしこのまま放置していたら、よくなるどころか意識がなかなか戻って来ないでしょう。そして、精神病院に行ったら、完全に統合失調症と診断され、入院したら、一生薬漬けになるのが目に見えています。
そうなって、おかしくなった人を実際何人も見てきています。それだけは避けなければなりません。
そして、もし、そうなったら、この先、何十年間、本人だけでなく家族はどれだけの負担となるでしょう。その本人の人生が終了してしまうのです。親としてはいたたまれないでしょう。
その姿が浮かんだので、思い切って受けることにしました。
こうした意識が飛んでいるようなひどい状態の人は今まで受けたことがありませんが、少しでも良くなるなら、と少し楽観的な気持ちでした。
そして、
1.合計2週間ほど行う、
2.プログラムは1日当たり、朝の10時から夕方5時まで昼休みをはさんで、ぶっつづけで、
という条件で引き受けることにしました。
通常、人はコミュニケーションをする場合、相手に注意を置いたあとで、メッセージを言葉なり、しぐさなりで行います。
それであれば、コミュニケーション不能な人をコミュニケーションを回復させるには、まず注意を置くことができる能力を回復させる必要があります。
そのプログラムを行うことに決めました。
当日、家へつくと、外出したいと本人がわめいているのをお姉さんが玄関の鍵をかけて、行かせまいとし力づくで、抑えている状態でした。
いやはや最初からすごい場面だと思いつつ、3人がかりで抑えて、なんとか部屋へ入れ込み、無理やり、座らせました。
そしてスタートしました。注意を方向付けるには、意識を外に向ける必要があります。それは、「あの壁を見て下さい。」相手が見たら、「ありがとう。」「では、あそこの人形を見て下さい。」相手が見たら、「ありがとう。」というプログラムを延々とやるのです。
その間、逃げそうになるのを抑えて、「もう少しやろう。」などと声をかけてやります。それも1時間に1回は「もうやめる。この人やだ!」「知らない人帰って!」などと言うのです。それもなんとか乗り切り、結局それを7時間やりました。
簡単に書きましたが、これを実際やるととてもしんどいです。まず普通の人だと集中力が30分と持たないでしょう。かなりのトレーニングを積んだのでできる技です。
終わると声も枯れかけました。そしてその娘は風呂に入っていないので臭いのです。鼻が曲がりそうです。それでもまいりました。
終わって、ホテルへつくと、精も根も尽き果て、風呂に入る前に7時過ぎから、倒れるように寝てしまい、目が覚めたら、夜の11時で、風呂に入りまた寝ました。
翌朝起きると身体がばりばりに痛いのです。相当その影響をくらった感じでした。
翌日は、もう少し進展させようと違うプログラムを用意しました。それは、別のコミュニケーションのトレーニングで、「あなたの手を貸してください」手を私に差し出したら、握手して、「ありがとう」と言って、また相手の手を元に戻すものです。これは、さらなる言葉でないコミュニケーションを身体で行う訓練です。
これを午後からやろうとしたとき、障害にぶちあたりました。
それは身体に触れるだけでもとんでもない叫び声を上げるのです。以前に3ケ月ぶりにお風呂へお母さんが入れようとしたとき、とんでもない叫び声を上げたと聞いていましたが、身体に触れるだけでそうなるのです。
「助けて!!! やめて!!!!この人帰って!!!!」と高架下の電車よりもうるさい声を上げるのです。近所中に響き渡るような声です。警察が来ないか、ひやひやしました。
そして、実際、手を貸すことをしません。しょうがないので、手に触れることだけを行いました。
それでも叫び続けます。ほんの30cmほど顔の前で、とんでもないボリュームの耳の鼓膜が破れそうな叫び声を、結局4時間以上受け続けました。。。。。
しかし、最後の方は、少しづつ叫びも減ってきました。
人が泣くと浄化するように、叫ぶことで、そうした溜まった有害なエネルギーが浄化します。
終わりになると少し顔の色も良くなり、血色も良くなってきました。
途中でその娘に、「絶対、よくなるから頑張ろうね!」と声をかけると返事はしないけど、聞いているのがわかります。そしてやっている間は目立って逃げ出すことがないのです。その娘は外見的にはおかしく見えるけど、中身はよくなりたい気持ちがあるのです。そうでない限り、こちらに協力はしません。それがわかるだけにしんどくても頑張って続けました。
「よし、これで明日は、握手できるようになるだろう」と思い、期待して帰路につきました。
叫び声を浴び続けたので、無意識に身体が強張っていたのか、体がバリバリに凝っていました。
そこで、夜スーパー銭湯に行き、風呂に入っても凝りが取れないので、マッサージを頼みました。30分やってもまったく凝りが取れず、結局1時間コースを受けましたが、まだ十分ではありませんでした。(最終的には、愛知に戻ったあと、鍼灸院へ数度通って針とマッサージで回復しました。)
1週間は続けようと思ったけど、このまま続けてやるには、あと2日が身体的に限界かなと思いその日は、床につきました。
翌朝、お母さんから電話で「娘が家出してしまい帰ってきません!」とのことです。
引きこもりといえど、コンビニくらいは行きますが、それ以上の行動は今までしたことがありません。「えっ」と思いつつ、行きそうな場所、旅館組合にFAXなどを送り、必要な手をお母さんに指示しました。そして、しょうがないので、帰ってきたら、またやりましょうとそこをあとにしました。
こちらの予想を10倍以上上回る大変さの2日間が終わったのでした。
しかし、その後、その家族の友人から私が行っていることについて、「そんなことをするものではない!」と大きな邪魔が入り、それを押しのけている間に1ケ月ほど経ちました。
その娘は、実は家出のあとで、2週間ほどで家に帰ってきました。なんでもその間、ホテル住まいをしていたそうです。今まで引きこもりだったことから、考えられない状況の改善です。
しかも、帰ってくると、その娘さんは1人住まいをしたいと言い始めました。私は、家にいると何かの刺激があるので、静かな環境が良いので賛成した方が良いとアドバイスをしました。
そしてその娘は、それを開始し、さらに、犬のペットを飼いはじめ、3日ほど前には、アルバイトを知り会いのお店で始めました。ここまででわずか2ケ月間に起きました。
あの同じことを繰り返していた娘さんが、きちんとアルバイトも出来て、1人暮らしをできるくらいまで回復したのです。
それを聞いて心から嬉しかったです。
また落ち着いたら、完全回復させるために行く予定です。しかし、とにかく改善の方向へ明らかに進んでいるので、身体を痛めた甲斐があった気がします。
人は良くなれるんです。本人のコミュニケーション能力を回復させていけばです。
本当に良かったです。
この結果、次のまた大変な引きこもりの人の話が来ています。(^^;)
でも、まあなんとかなるでしょう。
と今回も楽観的で、かつチャレンジする予定です。