警察が机をバンバン叩いて、「どういうつもりだ!」と怒鳴った。その1

それは、10年ほど前、東京の三軒茶屋のアパートに住んでいた時のことだ。
実家へ帰り、9時過ぎに自分の家へ帰ってくて入ろうとすると
アパートの隣の部屋で怒鳴り声が聞こえる。耳を澄ますとどうも酔った息子の声のようだ。

隣はおばあちゃん(母親)と50代の結婚していない息子の二人住まいだ。
息子は、頭が剥げていて、昼間もぶらぶら歩いていて、あまり働いているように見えない。
締りのないタコみたいな顔をしている。

おばあちゃんは、腰がまがって小柄だ。
足が悪くで、ヒコヒコ歩く感じの人でいかにも人の良さそうな感じだ。
耳が遠い。

どうも、息子が騒いでいるようだ。
「おまえは何だ! ばばあ。」
「何言っているんだ。」と怒鳴り声は続く。
「おれあ、関係ねえ」
そのうちにバシッ、バシッという音まで聞こえてきた。
どうも殴っているようだ。

ここに来て、どうしようか考えた。

所詮隣の家のことだ。
関係ない。
そんなかかわりになると面倒だ。
でもおばあちゃんが殺されたら。。。
とても嫌な気分になるだろうな。
そうしたら悔いが残るな。

よしやろう!

とにかくやめさせないと。

覚悟を決めた。

おそるおそる。アパートの隣のドアを叩いてみた。

トントントン

中の人は気づかない。

少し勇気を出して

ドンドンドン

さらに勇気を出して

ドンドンドンドンドンドン

中で声が聞こえて、ドアが開いた。

「どうしたんですか?」

「息子が酔って私を殴るんです。」
「昼間からカラオケ行って、働かないんです」
「何言ってんだ。ばばあ」
「ひどいんです」
「そうなんですか?」と私
「ばばあ、勝手なこというんじゃねえ」

バシッと息子は小柄なおばあちゃんの頭をぶった。
おばあちゃんはよろけた。

「おまえ何すんだ!」
「この、ばああが悪いんだ」

彼が言い、終わらないうちに

「親をぶつんじゃねえ~」と
私は、息子の胸倉を左手で突いた。

私は体重85kg。体がスポーツで鍛えてある。
私は、軽く押したつもりだったが、
息子は、後ろに吹っ飛び、背後のふすまにぶつかり、くずれ落ち、
上にかけてあるのれんが落ちた。

息子はびっくりした顔になり、
起き上がると、
「おまえ関係ねえ」
「親をぶつな、この野郎」とにらみあった。
「警察行くか!」
「行こう」

おばあちゃんを含めて3者で駅前の警察まで歩いていくことにした。
私は少し歩くと疲れて休む足の悪いおばあちゃんと一緒に
歩いていった。息子はとうの先へ歩いていき
姿はもはや見えない。

逃げたら、やだなと思いつつ警察へ向かった。

乗りかかった船、どこまでやんなきゃいけないのかと思いつつ。。。

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